コラム

『朱音色LOOP』ライナーノーツを今俊郎様よりご寄稿頂きました!!

『朱音色LOOP』発売から１週間、デビューからお世話になってきたライター・今俊郎様よりライナーノーツをご寄稿頂きましたので掲載させて頂きます！

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今俊郎（こん　としろう）

ＰＣゲーム関連のクリエイター取材、イベント企画、進行のほか『電脳妄想開発室』や『情報アキハバラエティ はばラヂ』などのラジオ構成作家としても活躍する美少女ゲーム業界屈指のライター。

Twitter @kontoshi

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美少女ゲーム業界周りで働き始めて18年。これまで様々な人と出会った。その中には、もちろん多くの声優さんが含まれている。
そんな多くの声優さんたちの中でも、上田朱音さんの初対面はとても印象的……というわけではなく、ごくごく普通の出会いだった。それが普通とちょっと違ったのは、最初の出会いが彼女のデビュー前、いわゆる養成所生だったということがあるかもしれない。
そんなわけだから、とある音楽プロデューサーから紹介された上田朱音さんを鮮明に覚えていたわけじゃない。ところが、次に出会ったときに彼女は、某美少女ゲームの広報見習いのような立ち位置で僕の前に現れたのだ。
「え!? この業界の声優さんって、デビュー前からこんなこともするの!?」
上田さんの所属事務所がメーカーのプロモーションにも積極的に協力していることはそのあとに知ったわけで、なかなかに驚愕の再会だった。

その後、ありがたいことに上田朱音さんとは何度か仕事をご一緒させていただく機会もあり、（あれだけひどいいじり方をしたにもかかわらず）これまたありがたいことに「共演ＮＧ」とか「出演ＮＧ」などされることなく今日に至っている。なんて優しい上田朱音さん。そんな上田朱音さんがアルバムをリリースすることになり、マネージャー氏から「何か書いてくれますよね？ 番組にも出してくれますよね？」と凄まれたりすりゃ、そりゃ断ることなんかできませんよ。僕はこう見えて小心者なんですからね。

前置きが長くなりすぎたが、『朱音色LOOP』である。
2月26日にリリースされるこのアルバムは、デビューから声優としてはもちろん、シンガーとしても活動してきた上田朱音さんのワークスベストともいえる1枚だ。ソロ曲だけでなく、ユニットなどで歌ってきた楽曲が収録されているところも、彼女のファンにはうれしいポイントだろう。
さらに、今回のＣＤには再レコーディングされた楽曲が多いというのも注目すべきポイント。これまでの上田朱音さんの歩みを振り返りなら、「今の上田朱音」を楽しめるアルバムになっているのだ。以前の歌い方やユニットでの歌い方と聴き比べるのもよし、今の彼女の声に浸るもよし。ワークスベストにして「上田朱音ファンディスク-音楽編-」というべき1枚でもあるのではないだろうか。
「だったらもうちょっと曲数があっても……」と感じる人もいるだろう。しかし、ちょっと待ってほしい。この9曲、約40分という収録量こそが何を物語るのか。そう、一度はこのアルバムを、1曲目から順にじっくり聞いてほしいというメッセージなのではないだろうか。
「音楽の楽しみ方はひとそれぞれ」というような世の中。アルバムCDを購入したらすぐに携帯端末に入力し、お気に入りの曲を選んで聴く。確かにそういう聴き方も悪くはない。しかし、ちょっと待ってほしい。せっかく上田朱音さんとスタッフが頭をひねって導き出した曲順通りに聴くことで、そこに込められた「想い」を共有したいとは思わないか？ 僕はそう考えるのだ。それには9曲というサイズがとてもマッチするのである。一度でいいので、ぜひ『朱音色LOOP』を最初から最後まで、曲順通りにじっくり聴いてほしいと思う。

それぞれの収録曲に関しては、わざわざ僕が語る必要はない。ただ、ひとつ言えるのは、良質なサウンドがひしめく美少女ゲームソングの中に入っても、『朱音色LOOP』の楽曲は勝るとも劣らない輝きを放っていること。このあたりは参加した実力派コンポーザーの力によるところも大きいが、上田朱音さんが自身のキャリアの中で、演技だけでなく、歌の面でも自分の力を蓄え、表現の幅を広げてきたところにあるだろう。

ほんと、立派になったねえ。おじさんは嬉しいよ……って感じである。
つらつらと書き続けてきたが、ひとことでまとめるなら「上田朱音ファン、美少女ゲームソングファンにおすすめの1枚」ということ。ぜひ2枚目、3枚目のアルバムをリリースできるような活躍を期待したい。きっとそれは遠い日のことではないはずだ。

レコーディング・ダイアリー